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熱田図書館コラム~地元作家特別編~ に『そのハミングは7』が登場。

三洋堂書店オンライン「【熱田図書館コラム~地元作家特別編~】心地よく心が満たされていく「そのハミングは7」を推す」にて、『そのハミングが7』が紹介されました(2025年2月24日付け)。

―― 春の柔らかな日差しを浴びながらそよ風が頬を撫でるような心地良さを感じつつも、ひょっとして頬を撫でたのは気まぐれに通りがかった天使だったのかも。――

そんな気持ちを279ページの本書中274ページ目で感じました。それが『そのハミングは7』を推す理由です。

舞台はアメリカ南部。主人公はハリケーンに遭い盲目になった少年。
翻訳本かと思えるほどアメリカ文化を精緻に描いています。タイトルのハミングという英語にしても「口ずさむ」という意味の単語ではなく綴りも違います。

アメリカ南部の大学に留学した経験のある私は、作者は帰国子女に違いないと想像していました。
ところが作者は熱田図書館近くに在住の作家で、この本が実質的なデビュー作。しかもアメリカには一度も行ったことがないと。

登場する食文化や小動物は私にはなじみ深いものがありますが、生活したことがなければそれほど気にすることではありません。
例えば、プレーリードッグという可愛い小動物をご存じの方は多いでしょう。ですが本書ではウッドチャック。見た目は同じようなのですが若干の違いがあります。
コーンブレッドも頻繁にでてきますが、日本人的に相当する食べ物は母が作る味噌汁やカレーライスのようなものです。

それだけではありません。
作者は盲目の主人公トビーになりきるために目隠しを数か月して日常生活を過ごし、目が見えなくなると自分の感覚はどう変化するのかということまで身を持って体験したというのです。

そうしてできあがった作品が『そのハミングは7』です。

著者がWebで本作を発表したのが2016年。角川書店から発刊されたのが2024年12月。
じわじわと心に染みてくる本作を現すに相応しい年月です。

本のあらすじ紹介などを読むと、単なる盲目の少年の成長譚と思われてしまうのが残念です。
裏表紙の帯の最後に書かれている「人は誰しも、ある意味盲目である。」という一文が的確に本書の核心を捉えています。

心に抱えた深い闇で目を覆われた人たち。少年の心も同様に。
そしてトビーたちは出会うのです。本作の「鍵」となる主要人物の「ジャン」と。

読了後は、ひょっとして辛かったあの頃自分が出会ったのは「ジャン」だったのかも、と思ってしまいます。

世界中の多くの方が「ジャン」に出会えることを祈りつつ『そのハミングは7』を推します。

熱田図書館コラム~地元作家特別編~

記事を書いてくださったのは、名古屋市熱田図書館の佐々木忠祐館長。先天性の角膜異常で、5歳で移植手術をするまで「視力」をしらずに生きてこられたという佐々木さん。手術後も、拒絶反応などをおさえるための投薬が続き、医師からも、読書禁止、煙草禁止を強く言い渡される。アメリカ南部に留学経験があり、コーンブレッドが母の味であることや、ウッドチャックの早口言葉にも、馴染みがある。

そんな佐々木館長が、作者は帰国子女に違いない、と強く感じたという『そのハミングは7』。トビー、がんばりました!佐々木館長は『そのハミングは7』をもう4回も読まれたとのことですが、先日お会いしたとき、こんなことをおっしゃっていました。

「はじめはトビーだったんだけど、今ではジャンの気持ちになっているんですよ」

それを聞いて思い出しました。9年前に、印刷しただけのこの原稿を、当時小学校5年生だった親友の娘さんが読んでくれたとき、こう書いてくれたことを。

「ジャンがみんなを幸せにしているのが気に入りました」

佐々木館長は、はじめ、言っていた。「トビーは、かつての自分」「僕もジャンに出逢いたい」

それが、「今ではジャンになって、やさしい視線で周囲をみつめている」と。

すごい!と思いました。そのお言葉は、数日経っても私の心の中に、どーんと居座っています。

「どうしてかわからないけれど、『そのハミングは7』を一生読むと思います」

「必要な人のところへ、どうにかして届いてほしい」そんな言葉が、この物語を強力に支えてくださっています。

ありがとうございます。

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