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神が舌の上に公式を置いていく。#奇跡がくれた数式
みなさんこんにちは。
今日は雨が降っています。体調くずされてる方多いようですが、みなさんは大丈夫でしょうか。もし崩されてる方いらしたら、くれぐれも無理なさらないように、温かいものとゆったりめの睡眠をとれるようにご自愛ください。
さて今日は初めての映画の話を。
「奇跡がくれた数式」
ロバート・カニーゲルが1991年に上梓した『無限の天才 夭折の数学者・ラマヌジャン』を原作としているこの作品。
この作品、もうとにかく何も言わずに観ていただきたい。それくらい素晴らしかった。全編みている間、涙が止まらなかった。そして笑いも。偶然見た作品です。優待券があったので、ムダにするのもと思い、なんの期待もせずに小さなシアターに入りました。小さなといっては失礼かもしれません。それでもね、45席の2ndスクリーンで、この日入っていらした観客は20人いなかったと思います。15人くらいでした。
ずっと泣いていました。感動して。
この話は、イギリス統治下のインドにいたラマヌジャンという青年の物語です。彼には数学の公式が閃きます。証明はないのです。ただ閃く。それは数式であって数式でないのです。とにかく作品を見ていただきたいので、あまり説明したくはないのですが、ラマヌジャンはケンブリッジ大学にいたイギリスの数学者、ハーディーの目に留まり、イギリスへ招致されます。
「まさか、不可能だ」鼻で笑う数学者。何週間もかけて計算した定理を、黒いインドの青年が公式を導いている。あり得ない。斜めにみるその紙の上に、真理と定理が……。
ラマヌジャンは学位も持っていません。路上生活者です。しかし幼いころから数学に強い関心があった彼は、ジョージ・カーという数学教師が著した「純粋・応用数学基礎要覧」という、5000あまりの数式を列挙しただけの公式集に出逢い、ラマヌジャンはこの公式集を独学でひたすら解き続けていたそうです。
数学者が、世間や大学からどうみられていたか。映画をみるとよくわかります。
「ようこそ。精神病院へ」
研究を進める。定理がわかっても、それを証明しなければならない。証明できなければ、それは戯言でしかない。ハーディーは何度も何度もラマヌジャンに伝えます。なぜわかった。なぜだ。ハーディーは繰り返します。ラマヌジャンも繰り返します。閃いたんです――と。
「なぜ定理がわかった?」
”How do you know that theorem?”「閃いたんです。」「神が教えてくれるんです。」
”God speaks to me.”
ハーディーは無神論者です。神を信じていません。一方ひたすらに敬虔(けいけん)な信者であるラマヌジャン。神などいない。というハーディーとラマヌジャンとの壁は取り除かれないまま5年を共に費やします。しかしなんとしてでも、彼に発表をさせるのだ。この天才を埋もれさせてはいけないという湧き立つ熱情のもと、ハーディーは権威と戦います。
「どうやって閃くのだ?」
「信じないでしょうが。女神が舌の上に置いていくんです。目が覚めると。」
ラマヌジャンの、開きかけた心。しかしハーディーはやはり、「神は信じていない。」と返します。そして「やはり今までの関係でいい。」と閉ざされるラマヌジャンの心。
「君の友人になれなくてすまない」とハーディー。非常に見ていて苦しいやりとりです。
神を信じ続けたラマヌジャンと、決して信じなかったハーディ。しかし終盤で感動的なセリフがあります。
「私は神を信じないが、ラマヌジャン、君のことは信じる。」
原題:”The Man Who Knew Infinity”
Infinity とは無限という意味です。数学の公式というのは、誤差があるそうです。このパターンには何通りあるか、その答えに、何億何万何千うんぬんうんぬん通り!と数学者はただひたすらに紙の上にペンを走らせました。無限という意味のなすところ……。定理(theorem)とは、無限(Infinity)なのかもしれません。
最後に、「奇跡がくれた数式」という邦題について一言。最低だと思いました。浅はかにも、奇跡という言葉を使った。魅力もない。
しかし一晩寝て、思いました。神を信じたラマヌジャン。そうかこのタイトルは、神の奇跡。あくまでも、ラマヌジャンの心情に立ったタイトルなのかもしれないと。そして、奇跡とは、まさにラマヌジャンその人なのだと。ラマヌジャンという奇跡。
この邦題から、博士の愛した数式を思い浮かべてしまう日本人はきっと多い。損しているのではないかと思います。観たいと思うインスピレーションがわきませんでした。でも間違いなく傑作です。観てください。強くオススメします。
素晴らしい作品でした。
よんでいただいて、ありがとうございました!
nijino noran.
コメント
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2016年 12月 01日
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